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東京地方裁判所 昭和25年(ワ)4783号 判決

原告 田中貞

被告 関東証券株式会社

一、主  文

被告は、原告に対し、

(一)  昭和二十四年十月三日原告から預つた

(1)  旭化成株式会社株式百株分の株券、

(2)  関西ペイント株式会社新株式百株分の株券、

(3)  日東商船株式会社株式百株分の株券、

(4)  三楽酒造株式会社株式百株分の株券、

(5)  東京光学株式会社株式百株分の株券、

(二)  同月十一日原告から預つた

(6)  日本石油株式会社株式百株分の株券、

(7)  大東紡績株式会社株式百株分の株券、

(8)  日平産業株式会社株式二百株分の株券、

(三)  同月十七日原告から預つた

(9)  東洋レーヨン株式会社第二新株式百株分の株券、

(10) 東洋紡績株式会社第二新株式百株分の株券、

(四)  同年十一月四日原告から預つた

(11) 帝国石油株式会社第二新株式二百株分の株券、

(12) 飯野海運株式会社新株式二百株分の株券

を引渡さなければならない。

右株券の引渡が不可能なときは、被告は、原告に対し、その引渡不能の部分につき、

右(1) の株券については一株百四十二円、(2) の株券については一株七十二円、(3) の株券については一株六十八円、(4) の株券については一株七十円、(5) の株券については一株五十三円、(6) の株券については一株七十円、(7) の株券については一株百十五円、(8) の株券については一株四十八円、(9) の株券については一株二百六円、(10)の株券については一株二百十六円、(11)の株券については一株五十三円、(12)の株券については一株百十六円の割合によつて算出した金員を支払わなければならない。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、原告において、金四万五千円の担保を供託するときは、仮りに執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文第一、二、三項と同趣旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、つぎのとおり陳述した。

一、被告は、有価証券の売買及びその取次をなすことを業とする会社であるが、原告は、被告会社に対し、株式の買付を委託し、その受渡に際し、

(一)  昭和二十四年十月三日

(1)  旭化成株式会社株式百株分の株券、

(2)  関西ペイント株式会社新株式百株分の株券、

(3)  日東商船株式会社株式百株分の株券、

(4)  三楽酒造株式会社株式百株分の株券、

(5)  三井化学株式会社株式百株券一枚、

(6)  丸善石油株式会社新株式百株券一枚、

(7)  東京光学株式会社株式百株分の株券

を、

(二)  同月十一日

(8)  日本石油株式会社株式百株分の株券、

(9)  大東紡績株式会社株式百株分の株券、

(10) 日平産業株式会社株式三百株分の株券

を、

(三)  同月十七日

(11) 東洋レーヨン株式会社第二新株式百株分の株券、

(12) 東洋紡績株式会社第二新株式百株分の株券、

(13) 大和毛織株式会社株式百株券一枚

を、

(四)  同年十一月四日

(14) 帝国石油株式会社第二新株式二百株分の株券、

(15) 飯野海運株式会社新株式二百株分の株券

を、それぞれ、期間の定めなく、寄託したが、その后、昭和二十五年五月上旬、原告は、被告に対し、右株券の返還を請求した。よつて、原告は、被告に対し、右株券のうちすでに返還済の、

(5)  三井化学株式会社株式百株券一枚、

(6)  丸善石油株式会社新株式百株券一枚、

(10) 日平産業株式会社株式三百株分の株券中百株分、

(13) 大和毛織株式会社株式百株券一枚

を除き、その余の株券の返還を求め、併せて、その引渡につき、強制執行が不能のときは、その不能の部分につき、履行に代わる損害賠償として、右株券の本件口頭弁論終結当時の価額である主文第二項記載の各単価によつて算出した金員の支払を求めるため、本訴請求に及ぶしだいである。

二、もつとも、原告は、右株券を訴外正木芳夫に寄託したものであるが、同人は、被告会社の商業使用人たる専属外務員であるから、原告の委託によつて前記株式の売買をなし、且つ、買付けた株券の寄託を受けるにつき、被告会社を代理する権限を有していたものである。

三、仮に、正木芳夫が本件株券の寄託を受けるにつき代理権を有しないとするも、同人は、商業使用人として、被告会社の業務につき、一般的な代理権を有しておるのであるが、本件においても、前記株式の売買報告書が被告会社の社員蒲生勇により、被告会社の用紙及び社印を用いて作成され、又、原告に交付された本件株券の預り証が被告会社の用紙及び社印を用いて作成せられていることに徴し、原告は、正木芳夫に、前記の代理権があると信ずるにつき正当な理由を有していたわけであるから、被告会社は正木芳夫のなした右受託によつて、寄託契約上の債務を負担したことになる。

四、なお、被告会社が正木芳夫の行為を知らなかつたとしても、前項に叙べた事実に徴し、その知らなかつたことにつき、被告会社に故意又は重大な過失があつたといい得るから、商慣習により、右正木芳夫の受託に基き、本件株券を原告に返還すべき義務を負担したこととなる。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、つぎのとおり陳述した。

原告主張の事実中、被告が有価証券の売買及びその取次をなすことを業とする会社であること、被告会社が、原告の委託に基き、昭和二十四年九月二十八日旭化成株式会社株式百株、日東商船株式会社株式百株、同年十月八日日本石油株式会社株式二百株を買付け、当時その受渡を完了したこと及び訴外正木芳夫が被告会社の専属外務員であることは、これを認めるが、被告会社が原告からその余の株式につき買付の委託を受け、且つ、原告主張の株券の寄託を受けた事実及び右株券の返還の請求を受けた事実はなく、又正木芳夫が原告に、原告主張の株式四百株の株券を送付したことは知らない。なお、原告がその返還を求めている株式の本件口頭弁論終結当時の価額が原告主張のとおりであることは、これを認める。

<立証省略>

三、理  由

被告が有価証券の売買及びその取次をなすことを業とする会社であること、被告会社が、原告の委託に基き、昭和二十四年九月二十八日旭化成株式会社株式百株、日東商船株式会社株式百株、同年十月八日日本石油株式会社株式二百株を買付け、当時その受渡を完了したこと及び訴外正木芳夫が被告会社の専属外務員であることは、当事者間に争がない。

而して、証人木村尹隆の証言によつて正木芳夫が作成したと認められる甲第一号証の一ないし四(いずれも預り証)、その用紙が被告会社のものであることについては当事者間に争がなく、且つ、前記木村尹隆の証言によつて、正木芳夫及び蒲生勇が作成したと認められる甲第二号証の一ないし五と原告本人訊問の結果を綜合すると、前記正木芳夫は、昭和二十四年九月下旬より同年十一月上旬までの間五回に亘り、原告から前掲株式を含め、原告主張の(1) ないし(15)の株式の買付の委託を受け、前記のようにその買付をなし、その株券の受渡を了したほか、他の株式についても買付をなしたとして、同年十月三日、同月十一日、同月十七日及び同年十一月四日の四回に亘り、それぞれ、原告主張の株券を、期間の定めなく、原告から寄託を受けたことが認められる。

そこで、右正木芳夫は、右株券の寄託を受けるにつき、被告を代理する権限があつたか否かを判断する。正木芳夫は、前記のように、被告会社の専属外務員であつて、外務員は、証券業者の営業所以外の場所において有価証券の募集若しくは売買又は有価証券市場における売買取引の委託の勧誘に従事する証券業者の使用人にほかならないから、(証券取引法第五十六条)同条所定の事項の範囲内においては、被告会社を代理する権限があるものと解すべきところ、鑑定人森泉恒四郎の鑑定の結果に徴すれば、証券業者は、有価証券の売買及びその取次等に附随する業務として取引関係が現に存し、又は、将来生ずると予想せられるものより、有価証券の寄託を受けるものであることが認められるから、正木芳夫は、抽象的には、前記のように被告会社と取引関係のある原告から、前記株券の寄託を受けることにつき、被告会社を代理する権限があるといわざるを得ない。従つて、具体的に、その代理権のないことの主張立証のない本件においては、右正木芳夫の所為により、被告会社は、前記の日時、期間の定めなく、原告主張の(1) ないし(15)の株券の寄託を受けたこととなる。而して、原告本人訊問の結果によれば、原告が昭和二十五年五月上旬被告会社に対し、前記株券(但し、原告主張の(5) (6) (13)の株券及び(10)の株式三百株中百株分の株券は、原告の自認するようにすでに返還ずみである。)の返還を請求したことが認められるから、被告は原告に対し、右返還済のものを除く爾余の株券(主文第一項(1) ないし(12)記載のもの)を引渡すべき義務がある。

つぎに、主文第一項(1) ないし(12)記載の株式の本件口頭弁論終結当時の価額(一株宛の単価)が主文第二項記載のとおりであることは、当事者間に争がないから、もし、右株券の引渡につき強制執行が不能のときは、引渡不能の部分につき、被告は履行に代わる損害賠償として、原告に対し、右各単価によつて算出した金員を支払うべき義務のあることも、また、明かである。

よつて、被告の右義務の履行を求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を、仮執行の宣言について、同法第百九十六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小川善吉 高島良一 村上悦雄)

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